Two-Tone Cameoの型番はなぜ#217なのか?
1996年に正式発売されたTwo-Tone Cameoに付与された型番は#217。Two-Tone Gold and Silverシリーズとして同時期に発売されたものには#501〜505の型番が付与されており、Two-Tone Cameoのみ型番が全く異なっている。
#217の直後の型番である#218 Black Matteは1983年発売、#219 Camouflageは1986年発売なので、
#217という型番なら1980年代前半に発売されていて然るべきである。
ここからは推察となるが、#217は当初1980年代前半に発売が計画されていたのではないだろうか。
その根拠となるのが、SlimZIPPOで確認されている1983年刻印の#1617の存在である。品名はオリジナルの黒プラケースに貼られている「#1617 OVAL」。画像ではわかりにくいが、ヒンジ部にも金メッキが施されたゴールドプレートモデルである。#217と同様にボトムケースの中央に楕円(=oval)がデザインされたこのモデルは恐らくゴールデンエレガンスシリーズの後継デザイン候補として製作されたものと思われる。1976年に3種類のデザインで発売されたゴールデンエレガンスシリーズは1981年に2種が後継デザインに切り替わっており、次回のデザイン変更に向け1980年代前半に試作・検討が行われていたであろうことは想像に難くない。
#217同様のゴールドプレートモデルである#1617は実際にはZIPPO社カタログに掲載されることはなかったが、数年間製造されていた。その数年の間、基本的なデザインは変わっていないが、表面処理や楕円の線の本数などを少しずつ変えながら、テスト発売或いはテストマーケティングを行っていたようである。ゴールドプレートモデルとしての試行は1980年代後半までで終えたようだが、1980年代中頃からは同じ楕円をモチーフにしたSolid
Brassベースのものが製造されている(下段参照)。その試みは1990年代前半まで続いたが、正式発売には至らなかった。
話は少し横道に逸れるが、同一デザインのレギュラーとスリムの型番は下二桁(又は上二桁)を揃えるというルールがある。全てのラインナップに適用されているわけではないがベネチアンならレギュラーが#352、スリムが#1652、
同様にデニム#353、#1653、
スクリムショウ#359、1659、
ゴールデンエレガンス#34、#3400、
ブラックマット#218、#1618
等々枚挙にいとまはない。
左画像のスリムのOVALが#1617であれば、そのレギュラーは#217になる。スリム用に検討されていた#1617はテストマーケティングで芳しい成績を収められなかったために同様のデザインが適用されるはずのレギュラーも発売が見合わされることになったのではないだろうか。1990年代にTwo-Tone Gold and Silverという新ラインを発売するにあたり、#1617の経験を踏まえデザインの見直しが行われ、最終的にはゴールドプレートをベースにシルバーをあしらったデザインが採用された。Two-Tone Cameoのベースになったデザインは#1617なので、そのレギュラーサイズに与えられる#217という型番がTwo-Tone Cameoの型番になったということではないかと推察する。
このような経緯があったため、1980年代前半に用意された型番が10年遅れて日の目を見ることになったということだろう。
#217と同時期に発売された他のTwo-Tone Gold and SilverやREGENTなどが2年程度で終売される中、
この#217のみ1999年まで製造され続けた(製造期間は7年間)。販売が不調であれば終売になるのはどのモデルにも当てはめられるルールなので、#217は実際に売れていたのかもしれないが、本当はあまり売れていなかったのだが、長年にわたりデザインに関わった多くの人たちの想いが#217には詰まっていたから製造終了に踏み切れなかったのかなぁと思ったりもする。
真実は如何に。
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